Gate 研究院:モメンタム指標の暗号市場における応用とバックテスト

要約

  • モメンタム投資は価格トレンドの継続性に基づく仮説であり、伝統的金融市場と暗号市場の両方で広く用いられている。本報告はBTCを研究対象とし、モメンタム戦略の理論的基礎、行動ドライバー、潜在リスクを体系的に整理し、実証分析の枠組みを提供する。
  • モメンタムは価格の「慣性」の表れと理解でき、一般的な定量的手法は現在価格と過去価格との差分である。BTC市場においては、短期サイクルのモメンタム指標(例:10日モメンタム)が局所的なトレンド方向を効果的に描写できる。
  • モメンタム効果は行動金融学と密接に関連し、群集心理、追従行動、不足反応などの行動がトレンドの継続を強化する。一方、突発事象や感情の逆転は迅速にモメンタム信号を無効化し、大きな下落リスクをもたらす。
  • 本報告ではMACD、ボリンジャーバンド、ADX/DMI、RSIをコアのモメンタムツールとして選定し、トレンド方向、変動構造、トレンド強度、市場心理などの観点から価格の動能を描写し、補完的な分析体系を形成する。
  • バックテスト結果は、モメンタム戦略が市場構造に高度に依存していることを示す:レンジ相場ではMACDとRSIはフェイクシグナルに影響されやすく、ADX/DMIはリスクは制御できるがリターンは限定的、ボリンジャーバンドのブレイクアウトは変動拡大期に最も良好なパフォーマンスを示し、「変動型モメンタム」がBTC市場でより優位であることを示す。
  • BTC市場におけるモメンタム戦略の堅牢性向上のためには、多指標の組み合わせによる単一指標の失効リスク低減が有効である。

はじめに

モメンタム投資は価格トレンドの継続性に基づく定量的戦略の一種であり、伝統的金融市場と暗号資産市場の両方で広く注目されている。本研究は、BTC市場におけるモメンタム戦略の有効性を体系的に探求し、その理論的基礎、市場行動の論理、潜在リスクを分析し、今後の実証研究のための理論的枠組みを構築することを目的とする。

モメンタムの概念と測定方法

2.1 モメンタムの定義

金融市場において、「モメンタム」(Momentum)とは、一定期間内に資産価格が同一方向(上昇または下落)に持続的に変動するトレンドを指す。この概念は物理学のニュートンの運動法則と類似しており:物体は外力が作用しない限り、既定の運動方向と速度を維持しようとする。金融市場においても、価格の動きは既存の慣性を継続し、上昇または下落の勢いを持続しやすい。

2.2 モメンタムの定量式

価格トレンドの持続性を定量的に分析するために、投資家は一般的にシンプルかつ効果的なモメンタム計算式を採用する:

モメンタム = 最新価格 - 過去の特定時点の価格

この差分がその期間のモメンタムとなる。正値(Positive Momentum)は資産が上昇傾向にあることを示し、負値は下降傾向を示す。例えば、ある株の1か月前の価格が100ドル、現在の価格が120ドルなら、モメンタムは:120 - 100 = 20となる。これは過去1か月間にわたり正の動きが続いていることを示し、短期的な上昇の潜在的なシグナルとみなされる。ただし、市場のセンチメントやマクロ環境も考慮すべきである。

2.3 BTCを基準としたモメンタム指標

暗号資産研究においては、BTCが代表的なモメンタム分析のサンプルとして頻繁に用いられる。伝統的な株式や指数と同様に、BTCのモメンタムも異なる周期の価格差で測定可能であり、特に短期サイクル(例:10日モメンタム)が一般的である。

10日モメンタムの計算式は以下の通り:

BTC 10日モメンタム = 本日の終値 - 10日前の終値

この指標は、過去10日間のBTC価格変動幅を直感的に示す。例えば、11月24日のBTC価格が87,288ドル、10日前の価格が94,584ドルの場合、10日モメンタムは:87,288 - 94,584 = -7,296となる。この負の値は、過去10日間にわたり価格が下落していることを示し、売り圧力が優勢であることを反映する。逆に正値であれば、価格が上昇トレンドにあることを示す。

2.4 市場の解釈と動的要因

モメンタム指標は価格の継続性を示すだけでなく、過去の重要イベントや経済サイクルの変化と結びつけて、市場トレンドの背後にある推進力を解釈することも可能である。例えば:

  • 正のモメンタムの蓄積は、投資家心理の楽観、経済見通しの改善、企業収益の増加などの局面で一般的に見られる。
  • 負のモメンタムの継続は、リスク回避の心理、マクロ経済の圧力、システムリスクの高まりとともに持続しやすい。

しかしながら、モメンタムは完璧な指標ではなく、突発的な経済事象や政策変更、業界ショックなどの外部要因により、価格トレンドが急反転し、信号が無効化されるリスクも存在する。したがって、実際の投資判断においては、他のテクニカル指標やファンダメンタル分析と併用し、判断の正確性と安定性を高める必要がある。

モメンタム投資の概要

モメンタム戦略の核心思想は、明確な上昇または下降トレンドを示す資産は、短期から中期にかけてその方向に沿って継続しやすいというものである。投資家は、トレンドシグナルの識別、価格動能の分析を行い、トレンドの方向に従って買いまたは売りを行うことで、超過リターンを狙う。基本的な価値投資や成長投資と異なり、モメンタム戦略は価格行動そのものを主要な情報源とみなす。

伝統的な株式市場では、過去一定期間の資産パフォーマンスに基づき、将来のポジション方向を判断することが一般的である。暗号通貨市場では、価格変動の激しさと市場心理の変化の速さから、モメンタムの特徴がより顕著となり、特に研究価値の高い分野となっている。

モメンタム投資の理論的背景は行動金融学に由来する。市場参加者はしばしば非合理的な行動を示し、群集心理、追従行動、過剰反応や反応不足などにより、資産価格が一定期間同一方向に持続的に動くことがある。トレンドが形成されると、投資家の追随行動がさらにトレンドを強化し、モメンタム効果を生み出す。

しかしながら、モメンタム戦略には明確なリスクも伴う。トレンドは市場環境の変化や感情の逆転、突発的な事象により急反転し、戦略は高い変動性と潜在的な下落リスクに直面する。さらに、戦略はタイムリーなトレンド認識とポジション調整に依存しているため、市場動向に対する継続的な注視が必要となる。

総じて、モメンタム戦略は、低評価の資産を見つけて価値を追求する価値投資や、企業の将来成長性に焦点を当てるグロース投資とは異なり、価格動向の継続性とその背後にある行動ドライバーに重点を置くものである。高いボラティリティを持つBTC市場においては、モメンタム効果の存在とその安定性についての深い検討が必要となる。本研究では、理論的整理と実証分析を通じて、BTC市場におけるモメンタム戦略のパフォーマンスと実用性を検証する。

一般的なモメンタム指標

本章では、最も代表的なテクニカル指標である移動平均収束拡散指標(MACD)、ボリンジャーバンド(Bollinger Bands)、平均方向性指数と動向指数(ADX/DMI)、および相対力指数(RSI)について体系的に解説する。これらの指標は、市場のトレンド方向、変動構造、動能の強弱、反転の兆候を多角的に描写し、定量的なモメンタム戦略の構築に不可欠な基盤となる。

4.1 MACD(移動平均収束拡散指標)

4.1.1 理論的背景

MACDは、J. Welles Wilder Jr.によって1979年に提案され、その核心は異なる周期の指数移動平均(EMA)の差を用いてトレンドの速度と方向を測る点にある。短期EMAは新しい情報に敏感で、市場の動能変化を迅速に反映しやすい。一方、長期EMAはトレンドの全体的な方向性を示す。MACDは、これらの差の変化速度を捉えることで二次的なモメンタム指標(トレンドの変化の変化)として機能する。

その利点は:

  • トレンドの方向(DIF)と強さ(ヒストグラム)を同時に把握できる
  • ノイズに対して比較的ロバストであり、中期的なトレンド判断に適している

4.1.2 指標の解釈

標準パラメータ(例:12,26,9)を用いた場合、MACDは以下の三要素から構成される:

  • MACDライン:12日EMAと26日EMAの差
  • シグナルライン:MACDラインの9日EMA
  • ヒストグラム:MACDラインとシグナルラインの差

これらの動きは、価格の構造とともに明確な段階的変化を示す。例えば、10月中旬に価格が約126,193ドルに上昇した後、MACDラインはシグナルラインを下回り、ヒストグラムも負に転じ、上昇動能の衰退を示す。その後、全体的な弱気局面に入り、MACDはゼロライン以下に位置し、空売り圧力が優勢となる。

価格が11月下旬に80,646ドル付近で反発した際、MACDの負の動能は縮小し始め、空売り勢力の弱まりを示すが、依然としてゼロライン以下に留まるため、トレンドの反転にはさらなる確認が必要である。この構造は、トレンド反転の兆しを示すために、他の指標と併用して判断される。

MACDのゼロラインは、トレンドの判断において重要な役割を果たす。ラインが上方に位置する場合、短期EMAが長期EMAを上回り、市場は強気の構造にあると解釈される。逆に下方に位置する場合は、弱気の勢いが優勢であることを示す。図中では、11月以降MACDは長期的にゼロライン以下にとどまり、明確な下落トレンドを示している。

4.1.3 使用上のポイント

MACDのゼロラインは、トレンドの方向性を判断する上で重要な指標である。ラインが上方にあるときは、短期EMAが長期EMAを上回り、多頭の市場構造を示す。逆にラインが下方にあるときは、弱気の動きが支配的となる。11月以降、MACDは長期的にゼロライン以下に位置し、継続的な下落トレンドを示している。

投資家は、MACDと他の指標を組み合わせてシグナルの信頼性を高めることが一般的である。例えば:

  • RSIと同時に用いることで、過買・過売の状況を確認し、トレンドの反転や継続を判断
  • 出来高と併用し、クロスとともに取引の有効性を判断
  • 移動平均システムと併用し、ノイズを除去しトレンドの明確化を図る

また、MACDのダイバージェンスは重要な構造的シグナルである。価格が新安値を更新しているにもかかわらず、MACDが新安値を更新しない場合、底打ちの兆しとなる。逆に、価格が新高値をつけてもMACDの高値がそれに追随しない場合は、上昇の勢いが衰退しつつあることを示唆する。

4.2 ボリンジャーバンド(Bollinger Bands)

4.2.1 理論的背景

ボリンジャーバンドは、J. Bollingerによって1980年代に提案されたもので、市場の変動性を標準偏差を用いて測定し、動的なチャネルを形成する。従来の固定幅チャネルと異なり、市場の変動に応じてバンドの幅がリアルタイムに拡大・縮小し、より正確な環境把握を可能にする。

一般的に、3本のラインから構成される:

  • ミッドライン(MID):20日単純移動平均(SMA)
  • 上バンド(UP):ミッドライン + 2×標準偏差
  • 下バンド(DN):ミッドライン – 2×標準偏差

統計的性質に基づき、正規分布仮定の下で、価格の約95%がこの範囲内に収まるとされる。したがって、ボリンジャーバンドはトレンドの方向と変動性の両方を示す。

バンドの拡大は、市場の高い変動性とトレンドの拡大を示し、収縮は変動の低下と次のトレンド形成の前兆とみなせる。中軌はトレンドの指標としても機能し、トレンドとレンジの両局面で分析に役立つ。

4.2.2 指標の解釈

標準設定(20,2)を用いた例を図示し、価格の動きとともに解釈する。10月初旬に価格が約126,193ドルに上昇した際、上バンドは大きく拡張し、バンド幅も広がった。これは、上昇トレンドとともに変動性が増大していることを示す。ローソク足はしばしば上バンドに沿って推移し、トレンド推進の典型的な構造を形成する。

価格が高値から下落し始めると、バンドは次第に収縮し、変動性の低下を反映する。下落局面では、価格は下バンドに沿って動き、明確な下降トレンドが形成される。11月中旬に価格が80,646ドル付近で反発した際、バンドの幅は縮小し、下バンド付近での反発が見られる。これは、下落の勢いが弱まりつつある兆候であるが、価格が中軌を超えずに推移しているため、トレンドの反転にはさらなる確認が必要となる。

全体として、ボリンジャーバンドは、上昇・下降の段階的変化とともに、変動性の変化を明示し、トレンドの強さと持続性を理解するための有効なツールとなる。

(# 4.2.3 使用上のポイント

ボリンジャーバンドの応用は、トレンドの把握だけでなく、変動性の分析や価格の位置判断にも及ぶ。中軌はトレンドの重要な境界線とみなされ、価格が中軌上にある場合は相対的に強気、下回ると弱気と解釈される。10月中旬に価格が中軌を下回った後、再び上回れずに推移していることは、下降トレンドの継続を示唆している。

バンド幅の変動は、変動周期の把握に役立つ。バンドが拡大すると、市場は高い変動性に入り、トレンドの加速や拡大が期待される。逆に収縮は、次のトレンドの始まりや反転の前兆とみなせる。9月から10月初旬にかけてのバンド収縮と、その後の急騰は、「収縮→ブレイクアウト」の典型的なパターンを示す。

また、価格が上バンドに沿って推移している場合、必ずしも買われ過ぎを意味しない。トレンドの勢いが強い場合、上バンドは単なる押し目や調整の範囲内となる。逆に、下バンドに沿った動きは、単なる売られ過ぎではなく、明確な下降トレンドの証左となる。

信頼性向上のためには、MACDやRSIなど他の指標と併用し、トレンドの方向性や過熱感を確認することが推奨される。例えば、上バンド付近でRSIが70を超えている場合は過熱感を示し、逆に下バンド付近でRSIが30を下回る場合は売られ過ぎを示唆する。

) 4.3 ADX/DMI(平均方向性指数と動向指数)

4.3.1 理論的背景

ADXとDMIは、J. Welles Wilder Jr.によって提案されたトレンド追随型の指標群であり、市場のトレンドの強さを測ることに特化している。DMIは、正の動向指数(DMI+)と負の動向指数(DMI−)から構成され、上昇または下降の勢力を評価する。ADXは、DMI+とDMI−の差を平滑化したもので、トレンドの強さを示す。

DMIは、前の高値と比較した現在の高値の上昇幅(DMI+)と、前の安値と比較した現在の安値の下降幅(DMI−)を計測し、これらの値の差により市場の買い圧力と売り圧力を評価する。DMI+がDMI−を上回ると、上昇勢力が優勢と判断される。逆に、DMI−がDMI+を上回ると、下降勢力が優勢となる。

ADXは、DMI+とDMI−の差の大きさを平滑化し、トレンドの強さを数値化する。高いADX値(一般的に25以上)は、明確なトレンドの存在とその強さを示し、低い値はトレンドの弱さやレンジ相場を示す。したがって、ADXとDMIは、トレンドの方向と強さの両方を同時に把握できる優れたツールである。

4.3.2 指標の解釈

標準パラメータ(例:DMI14、ADX14)を用いて、図中のBTC日足データを分析すると、10月中旬の高値126,193ドル付近で、DMI+がDMI−を明確に上回り、上昇勢力の強さを示す。一方、ADXはこの時点ではあまり上昇しておらず、トレンドの確立には時間を要したことがわかる。価格が下落に転じると、DMI−がDMI+を上回り、下降局面の勢いを反映し、ADXも徐々に上昇し、トレンドの強さを示す。

図中では、10月末以降、価格が明確な下落局面に入り、ADXは徐々に高値圏(25以上)に達し、下降トレンドの強さを裏付ける。DMI−は長期間DMI+を上回り、下降の勢いが持続していることを示す。トレンドが進行するにつれ、ADXは高水準を維持し、下降トレンドの安定性を示す。

11月中旬に価格が80,646ドル付近で反発した際、DMI−とDMI+の差は縮小し、ADXも横ばいまたは低下傾向を示し、トレンドの弱まりを示唆。全体として、ADX/DMIは、上昇・下降の勢いとその持続性を把握するのに有効であり、トレンドの発生と終息のタイミングを見極めるのに役立つ。

![]###https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/gimg.gateimg.com/learn/1f4fd5bc2bf5b7b13e3ddd5896485ab5ddd06e2b.png###

(# 4.3.3 使用上のポイント

ADXとDMIの組み合わせは、トレンドの強さと方向性の両面から市場を分析するのに有効である。ADXは、一般的に25を超えるとトレンドが顕著になり、20以下はレンジ相場と判断される。図中では、10月下旬から11月にかけてADXの上昇とともに価格が下落し、明確な下降トレンドを確認できる。

DMIのクロスは、トレンドの方向性を示すシグナルとして利用される。DMI+がDMI−を上回ると買い圧力が優勢、逆は売り圧力が優勢と判断される。ただし、トレンドが弱い場合やレンジ相場では、クロスシグナルは頻繁に反復し、誤ったシグナルとなることもあるため、ADXの値と併用して判断することが望ましい。

また、ADX/DMIは他の指標と併用することで、ノイズの除去と信頼性の向上が可能である。例えば、RSIやMACDとともに用いることで、トレンドの発生と反転のタイミングをより正確に捉えることができる。価格が中軌を下回り、DMI−がDMI+を維持し、ADXが高水準を示す場合は、下降トレンドの継続と判断できる。

全体として、ADX/DMIは、トレンドの発生・継続・終息を多角的に把握できるため、トレンド追随戦略の補完ツールとして有効である。ただし、遅行性と滞後性を考慮し、他の指標と併用して使うことが推奨される。

) 4.4 RSI(相対力指数)

4.4.1 理論的背景

RSIは、J. Welles Wilderによって1978年に提案された、価格の変動速度と強さを測るモメンタム振動指標である。市場の過熱感や売られ過ぎを判断するために用いられ、0から100の範囲で表現される。RSIの基本的な考え方は、一定期間内の上昇幅と下降幅の比率を比較し、その相対的な強弱を標準化することで、投資家心理の偏りを可視化する。

一般的に、14期間のRSIが標準的に用いられるが、市場の特性に応じて短期・中期の複合的な設定も行われる。RSIは、振動性の高い市場で特に有効であり、トレンドの持続や反転の兆しを捉えるのに役立つ。

4.4.2 指標の解釈

例として、Gateのデフォルト設定(RSI1、RSI2、RSI3)を用いて市場の動きを解説する。10月中旬の高値126,193ドル付近では、短期RSI(RSI1)が先に70を超え、その後、長期のRSI2、RSI3も追随し、過熱状態を示す。価格はその後急落し、RSI1は30未満の超売り状態に入り、反発の兆しを示す。

下降局面では、複数の周期のRSIが長期間20〜30の範囲内にとどまり、空売り圧力の強さを示す。11月中旬の反発局面では、RSIは徐々に回復し、30以上に持ち直すが、依然として低水準にとどまる。これらの動きは、空頭の勢いと反転の兆しを多角的に示している。

全体として、RSIは動能の背離や過熱感、反転兆候を捉えるのに有効であり、多周期の組み合わせにより、異なる時間スケールでの動きの伝達を理解できる。

4.4.3 使用上のポイント

RSIは、市場の相対的な強さと過熱・過冷の状態を判断するのに適している。一般的な閾値は70超過と30未満であり、これらは過買・過売の目安となる。ただし、強いトレンド中はRSIが長期間高水準または低水準に留まり、反転のシグナルとしての信頼性は低下するため、他の指標と併用することが望ましい。

多周期RSIの組み合わせは、動能の伝達とトレンドの持続性を理解するのに役立つ。短期RSIは、短期的な動きの変化を捉え、中期・長期RSIは、トレンドの構造的変化を示す。例えば、短期RSIが過熱を示しつつも、中期RSIがまだ低位にある場合は、反転の確度が低いと判断できる。

また、RSIのダイバージェンス(価格とRSIの逆行現象)は、トレンドの反転兆候として重要なシグナルとなる。価格が新高値を更新しているのにRSIが高値を更新しない場合は、過熱の警告となる。逆に、価格が新安値をつけてもRSIがそれに追随しない場合は、底打ちや反転の兆しとみなせる。

BTCにおけるモメンタム指標のパフォーマンス

5.1 データの概要

本研究では、TradingViewプラットフォーム提供のBTCUSDTの日足データを用いてバックテストを行う。比較の一貫性を保つため、すべての戦略は同一の過去価格系列を使用し、初期資金は10万ドルと設定。データ期間は2024年11月26日から2025年11月26日までとし、BTCの局所的なレンジ、下落、反発局面をカバーし、トレンド追随型とレンジ反転型の指標のパフォーマンス差を検証する。

データには、始値、終値、高値、安値、出来高が含まれ、すべて終値を基準に指標計算を行う。プラットフォームの自動処理により、取引日欠損やタイムスタンプの同期問題は解決済み。回測中は、すべての戦略で同一の初期資金、手数料設定(0.1%)、フルポジション運用とし、レバレッジや加減算は行わない。これにより、指標のシグナルの純粋な効果を評価できる。

( 5.2 回測方法

本章の戦略は、TradingViewのStrategy Testerを用いて、Pine Script v5で実装。シグナル発生時の取引は、次の足の始値で実行し、未来の情報を含まないリアルなシナリオを模擬。手数料は一般的な0.1%とし、全てのポジションはフルサイズでエントリー・エグジット。レバレッジや加減算は行わず、純粋に指標のシグナルの有効性を検証。

結果は、総リターン、最大ドローダウン、Profit Factor、勝率、取引回数などの定量指標で評価。これらを比較し、各指標の実用性と安定性を分析する。

) 5.3 指標戦略の設定

本研究では、前述の理論に基づき、一般的に用いられるパラメータを採用。MACDは12,26,9の設定で、DIFとシグナルラインのクロスをトレンドの開始・終了のシグナルとする。RSIは14期間で、30割れを下回ったら買いシグナル、70超えを売りシグナルとみなす。ADX/DMIは14期間で、DMI+がDMI−を上回り、ADXが25以上のときにトレンドと判断し、エントリー。逆はエグジット。ボリンジャーバンドは20日SMAと2倍標準偏差を用い、価格が上バンドを突破したら買い、下回ったら売りとする。

これらの戦略は、トレンド追随、レンジ反転、トレンド確認、変動ブレイクの異なる思想を反映し、多角的に市場の動きを捉える。

5.4 回測結果

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2024年末から2025年末の期間において、各指標戦略のパフォーマンスは大きく異なる。MACD戦略は総リターン−15,774ドル(約−1.51%)と振るわず、トレンドの持続性に乏しく、多数のフェイクシグナルにより損失を重ねた。最大ドローダウンは36,091ドル、勝率は29.03%、Profit Factorは0.579と、トレンドフォロー戦略の弱さを示す。

![]###https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/gimg.gateimg.com/learn/7bcf1734cd70ab34cadf79f53be2737e46316212.png###

RSI戦略も同様にマイナスリターンで、−47,846ドル(約−4.81%)と最も低迷。全体的にトレンド下落局面であり、RSIの過剰反応による誤った反発シグナルが多発し、損失が蓄積。最大ドローダウンは83,555ドルと突出し、Profit Factorは0.607、勝率44.68%ながら、リスクリワードが悪く、全体的な収益性は低い。

ADX/DMI戦略は取引回数が最も少なく、7回のエントリー・エグジットにとどまる。トレンドの明確性に依存し、トレンドが出ているときのみシグナルが出るため、総リターンは206ドル(約0.21%)と微小だが、過剰取引を避けられる。最大ドローダウンは13.46%、勝率は約28%、Profit Factorは1.008とほぼ損益分岐点で、トレンド不足の年でも安定したパフォーマンスを示す。

最も優れた結果を示したのはボリンジャーバンドのブレイクアウト戦略で、総リターン45,371ドル(約4.63%)と高い収益を記録。市場の変動拡大局面において、価格のブレイクを捉えることに成功し、11回の取引中9回が利益を上げ、勝率81.82%、Profit

ADX0.88%
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